2026年1月、中国が日本向けに「軍事転用(デュアルユース)に関わる品目」の輸出を禁じる措置を発表し、 レアアース(希土類)も影響範囲に入り得るとして注目が集まっています。 本記事は、ニュースと論点を「初心者が混乱しない形」に整理し、感情論と現実論を分けて読み解くためのガイドです。
目次
なぜ「レアアース規制」が問題視されているのか
発端は、中国が日本向けに「軍事用途に関わるデュアルユース品目」の輸出を禁じる措置を打ち出したことです。 報道では、対象にレアアース(特にハイテク用途で重要なもの)が含まれ得るとされ、日本側は「到底容認できない」と反発しています。 ※ここで重要なのは、現時点で“全面禁輸”と断定できる状況ではなく、規制・審査の厳格化(政治的シグナルを伴う可能性)として理解するのが安全だ、という点です。
レアアースは、EVモーターや産業用モーター、風力発電、スマホ、精密機器などで使われます。 とくに高性能磁石(永久磁石)の原料として、サプライチェーンの目詰まりが起きると製造業の広い範囲に影響が波及し得ます。
ニトリ会長の発言に対する賛否
今回の規制を受け、ニトリHDの似鳥昭雄会長は 「レアアースはありとあらゆる物の部品に入っているのではないか」と述べ、政府に早い対応を求めました。
賛成(危機感共有):レアアースは幅広い製品に使われ、供給が詰まれば調達コスト増・納期遅延のリスクがある。
慎重(煽りすぎ注意):規制は政治的圧力の性格もあり、現時点で“ただちに供給が止まる”と断定するとミスリードになり得る。
初心者がここで混乱しやすいのは、「レアアースが大事」→「だから即、全部止まる」と短絡してしまう点です。 実際には、対象品目・用途(軍事用途か)・審査の運用で影響の強さは変わります。
中国依存は本当に危険なのか
結論から言うと、リスクは「中国が悪い/良い」の話ではなく、 供給網が一国に偏っていること自体にあります。 偏りが大きいほど、外交・貿易摩擦・規制強化が起きたときに、調達が揺れやすくなります。
依存度データ
報道によれば、日本はレアアース輸入の約60%を中国に依存しているとされています。 また、資料によっては重希土類は中国依存が極めて高い(実質100%と示されるケース)ことも指摘されています。 つまり「どのレアアースか」によって、リスクの度合いが変わる点がポイントです。
- レアアース全体:輸入の約60%を中国に依存(報道)
- 重希土類:用途によっては中国依存が非常に高い(資料)
過去の教訓
日本が「依存の怖さ」を意識するきっかけになったのが、2010年前後のレアアース供給をめぐる混乱です。 当時、日本向けの出荷が滞った(あるいは滞ったと広く認識された)ことで、価格の急騰や供給不安が生まれました。 その後、レアアースを含む資源分野では、WTOでも中国の輸出制限が争点となり、2014年にパネル報告が出ています。
重要なのは、「一度混乱が起きた」という事実だけでなく、 “混乱が起きると市場心理が先に動き、調達コストが跳ねる”というメカニズムです。 今回も、実体としての供給量以上に、先行き不安がコストや在庫戦略に影響しやすい局面です。
代替策はどこまで現実的か
「脱中国」は一言で語られがちですが、現実には複数の手段の“組み合わせ”になります。 代表的なのは次の3つです。
- 調達先の多様化:豪州など中国以外の鉱山・供給網にアクセスする(ただし精製・加工は中国比率が高い領域が残りやすい)
- リサイクル:使用済み製品から回収する。技術的に進んでいるが、回収量・コスト・品質の壁がある
- 代替素材・設計変更:レアアースを減らす/使わない磁石・モーター設計。ただし性能・コスト・量産性が課題
ここでの現実的な結論は、 短期に「完全代替」は難しいが、中長期で依存度を下げる余地はあるということです。 したがって企業側は「即ゼロ」ではなく、調達・在庫・設計変更を段階的に組み合わせる戦略が現実解になります。
感情論と現実論を分けて考える
こうした話題は、どうしても「不買」「売国」「即死」など強い言葉に引っ張られがちです。 しかし、記事として価値が出るのは、感情を否定することではなく、 感情が生まれる理由を理解したうえで、事実に戻すことです。
感情論に寄りやすい見方
- 「全面禁輸だ」
- 「全部止まる」
- 「誰が悪いか」だけで判断
現実論として押さえる視点
- 規制の対象・用途・運用は?
- どのレアアースが詰まりやすい?
- 在庫・代替・設計で吸収可能?
現時点では「デュアルユース品目の規制(軍事用途)」が中心と報じられており、全面的な供給停止と決めつけるのは危険です。 ただし、供給網が偏っている以上、政治リスクが調達リスクに直結しやすいという構造自体は変わりません。
まとめ
- 中国の対日デュアルユース輸出規制は、レアアースにも波及し得るとして注目されている
- 日本のレアアース調達は中国依存が大きく(報道では約60%)、特定分野ほどリスクが高い
- 代替策は「ある/ない」の二択ではなく、多様化・リサイクル・設計変更の組み合わせが現実解
- 感情的な断定を避け、対象品目・用途・運用を確認しながらリスクを見積もることが重要
今回のニュースは「すぐに全部止まる」という話ではなく、 “偏った供給網が、政治リスクで揺れやすい”ことを再確認させる出来事です。 読者としては、煽りに飲まれず「どの素材が・どの用途で・どの程度詰まる可能性があるのか」を押さえるだけで、情報の見え方が一気にクリアになります。
参考文献(最終閲覧:2026-01-08)
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Reuters(2026-01-06)「China bans exports of dual-use items for military purposes to Japan」
https://www.reuters.com/world/asia-pacific/china-bans-exports-dual-use-items-military-purposes-japan-2026-01-06/ -
Reuters(2026-01-07)「Japan says China's dual-use export ban 'unacceptable'…」
https://www.reuters.com/world/asia-pacific/japan-says-chinas-dual-use-export-ban-unacceptable-rare-earths-crosshairs-2026-01-07/ -
TBS NEWS DIG(2026-01-07)「ニトリ会長『レアアースはあらゆる部品に』…」
https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/2387777 -
Electric Power Industry in Japan 2025(JEPIC, 2025)※重希土類依存の図表を含む資料
https://www.jepic.or.jp/pub/pdf/epijJepic2025.pdf -
WTO(2014)「China – Measures Related to the Exportation of Rare Earths, Tungsten, and Molybdenum(Panel Reports)」
https://www.wto.org/english/tratop_e/dispu_e/431_432_433r_e.pdf -
CEPR / VoxEU(2023-07-19)「Revisiting the China–Japan Rare Earths dispute of 2010」
https://cepr.org/voxeu/columns/revisiting-china-japan-rare-earths-dispute-2010 -
AP News(2026-01-07)「China announces another new trade measure against Japan…」
https://apnews.com/article/be0b160c721a62d6ea5ad130a212157b



